このイタリアンカラーな家の住人は、私の年若いいとこ夫妻です。空間建築工房としてははじめての、カントリースタイルの新築住宅となりました。
夫妻は土地を購入したのち、3年間かけていろいろなハウスメーカーやパワービルダーを何件も回り、工事会社を検討していました。折りよく私たちの他邸の新築完成見学会があったので、それをきっかけに空間建築工房で家を建てる決意をしてくれたのが始まりです。
さて、この二人の家に関するリクエストは、いつもの私たちのお客様たちとは違ったスタイルでやってきました。
『あまり贅沢は言わず、少々のこだわりだけは実現してほしいが、何しろ安ければ良い』というのです。
その具体的なこだわりも、「家はなにしろ外観が良いのが一番だ、家の内装は何でもいい。」という、
空間建築工房の普段のコンセプトの真逆のものでした。
さらに、「コストダウンにつながるから打ち合わせは一回でもいいよ,若い自分たちが支払える安さが大切なので。」という調子で…。
お客様とわいわい談笑しながらああでもない、こうでもない、という打ち合わせが多い空間建築工房にとっては、
拍子抜けしてしまうほどあっさりした家づくりを求められたのでした。
はじめは、私は大きく衝撃を受けました。このような時代ですからリーズナブルな家を建てることに異議はないのですが、
「普通の家」を求められると、建築事務所というのは職業上、心にどこか風が吹き抜けるような寂しい気持ちになるものなのです。
しかも打ち合わせが不要となれば、たとえ従兄弟とはいえその生活ぶりがわからず、どんな家を造ったら喜んでもらえるのか、ヒントをもらう時間がありません。
そこで、どう伝えようかいろいろなやんだ結果、こういう提案をしました。
「打ち合わせは、何回もしましょう。施主さんはお金を払うだけの存在ではなく、むしろ家を自分で造っていく楽しみを一番感じてほしい存在なんです。
私たちは自分が手がける以上、一生懸命造りますから、どうぞこれから家のことにたくさん興味をもってください。」
幸い、二人はこの提案をとても喜んでくれ、打ち合わせにインテリア雑誌を持参してくれたり、
希望を話し合ったリストを出してくれるようになりました。コストはもちろん抑えましたが、その中でどこまでできるかを私も懸命に考えました。
そして工事が始まり、数回の話し合いの後に、「どうやら、空間建築工房は僕達の趣味を、自分たち以上に表現してくれている気がする。
(できてきた家も)どれも自分たちの理想が形になっていて、工事の続きが楽しみで仕方がない。」と言ってくれるほどになりました。
家というものは、プランを作る人間、建てる人間、そして住人その人の、いろいろな愛情と思い出が詰まって出来ていきます。
よく話し、理解し、共感しあうとそんなオーラがある家ができてきます。
私たちのモットーである「誠実なデザイン」も、何に対する誠実さかといえば「住む人の暮らし」にであって、デザイン自体にではありません。
暮らしていて、ちょうどいい位置に窓や庇があるとか、普通に掃除をしたら美しく見えるとか、階段が上りやすいとか家具が良くみえるとか、
ちょっとした「きもちのいいこと」が家の中に沢山落ちていて、住んでいるうちに家のことが大好きになっていく、というのが、理想です。
「この家に引っ越してから、あぁ、こんなことまで考えてくれていたんだ、と思うところがいっぱいあるんですよ。」と言われましたが、
そういった私たちの気持ちに気づいてくださること自体を、ありがたく受止めています。
友達とその子供たちが、一日中ずーっと庭のウッドデッキで遊んでいるんです。
お母さんたちには、うちの中でカフェしてもらって。
ほんとにゆったりした平和な休日を過ごせるんですよ。
幸せの黄色いおうち・・・。小さなお子さんの声がする お宅からは、ふわんと幸せなにおいがするみたい。物語の中にいるようで、暮らしがきちっと動いている。そんなお宅でお話を伺いました。(クーカンの吉田雅一・良子も一緒に・・・。)
――明るいカラーの外観。意外に住宅街に馴染んでますね。
(パパ)夫婦ともヨーロッパが好きで、家を建てるなら温かみのある雰囲気がいいなと。イメージとしてはフランスとイタリアの間のカントリー、っていう感じですね。
(ママ)可愛い家にしたくて。でも展示場で見る家は、外観は可愛くても、中に入ると実用的で味気ないんですよ。家の外も中も可愛くしたい、というのが私の希望でした。
――おふたりの好みが一致していたわけですね。
(パパ)実は、僕がイタリア好きなんです。(笑)。
(ママ)新婚旅行もイタリアでした。彼の大好きなサッカーを観に行くっていうのも大きな目的でしたね(笑)
――なるほどご主人のサッカー好きがおおもと?
(パパ)サッカーとは直接関係ないですが、ヨーロッパの奥行きのある味わい深さに、ひかれるんですよね。だから家も温もりがあって個性的な感じがいいな~と。
(吉田雅一のつぶやき サッカー好きは僕もです・・・)
――家の中で気に入っているところはどこですか?
(ママ)私はやっぱりキッチン!料理好きっていうわけでもないのに、キッチンに居るのが楽しくて。片付けスペースもいっぱいあるし、壁のレンガの配色とか見ていていいなーと。それにキッチンの窓から、庭の砂場で遊ぶ子供たちの様子も見えて。クーカン、(設計)よく考えてくれたなあって、住んでみてよ~くわかります。
(パパ)僕はですね・・・、子供部屋のロフトかな。
――え~?なぜ、パパが子供部屋のロフトを?
(パパ)ロフトは男心をくすぐるんですよねえ。秘密基地。息子も2歳ながらにロフトがいいらしい(笑)。
(吉田良子のつぶやき 男子はなぜかみんなロフト好き!)
(ママ)お姉ちゃんも自分のお部屋が大好きみたい。今はもっぱら遊びスペースになっていますけど。
(パパ)そうそうリビングの天井、梁が見えているのも気に入っています。最初、提案されたときに、カントリーの家に梁ってどうかな?と思ったんですけど、今となってはこれ以外想像できないっていうか。
――ところで最初の話。個性的な住まいながら、違和感がなくて和みますね。
(ママ)ありがとうございます。道ゆく人にほめられたり、家の中も見てもらったご近所さんに「素敵ね、暮らしやすそう」と言われてとても嬉しいです。
(パパ)カーポートも「木」でつくってもらったのが良かった。芝の庭で遊ぶ子どもたちとサッカーできそうだし。まだここで暮らして少ししか経ってないけど、なんだか家族みんな、すんなり馴染んじゃったよね。