あるキッチンのショールームで、「私も家の相談をしたいんやけど…。」と
声をかけられたのがこの施主様との出会いでした。
ほかのお客様をご案内している最中だったのでショールームレディを紹介してその場を離れたのですが、
帰り際、「やはりあの人に相談したい」といって私を家に呼んでくださいました。
ショールームでそんなふうに見初めて!?いただくことはあまりないので、
かなりウキウキしながらお宅にお邪魔しました。 とても素敵な和風のお庭と
旧くて美しい飴色の廊下のある大きなお家でした。
格式のあるつくりなので、台所は北側にありました。
普段の生活の大半を過ごす部屋の、狭さと暗さを解消するため
2部屋をつなげて大きなリビングキッチンにすることがご希望でした。
部屋をつなげるなら大きく解体することをご提案しました。
バリアフリー(段差の解消)ではじめから1部屋だったように見せることもできますし、
大掛かりに剥がすと見えない家の傷みが露出しメンテナンスができるからです。
今回は、家が少しひずんでいたので柱を立て起こして修復し、雨漏りをしていた屋根の漆喰をつめなおし、 一部の瓦を入れ替え、壁と床には断熱材を入れて部屋の保温をしました。 「洗面所のお湯が出ないから、ついでに調べてね」と言われ水道管をあらわにしてみると、水道管は極度に錆びて割り箸一本が刺さらないくらいに腐食してしまっていました。 あともう少しで水道管がやぶれて水漏れしかねない状態でしたので、わかってよかったと施主様にはとても喜ばれました。
そんなこんなでお付き合いして2年後には介護のためにトイレを改修しました。 改修後すぐ、98歳のおばあ様は残念な事に他界されましたが、自動で開くトイレとピンクの壁に最後の冬の寒さと介護の苦労が少しでも緩んだとのことで、 やれてよかったねとお施主様と話しています。70代のお母さまが壁にラメやスパンコールを選ばれたのも、なんだかとても空間建築工房っぼくて素敵な仕上がりになったと思います。
介護のために、トイレをフォールディングドアにして楽に扉を開けられるようにしました。開き戸のために一歩下がるということも辛かったお婆さまが、自動で開く便器のふたをみて「あら、トイレがいらっしゃいって言っているわ」と喜ばれたそうです。
「わたしが使いやすいキッチン」の施主様とは、実の姉妹。
それぞれの家で充実した毎日をお過ごしです。クーカンとの出会いはお姉さまが最初でした。
姉「この家は、築60年近いかね。床がペコペコしていたんでリフォームしようと思って、キッチンも変えたかったので、ショールームへ娘と一緒に見に行きました。そのときに 見かけたのが吉田さん。よそのお客さんを連れて来ていたらしいんやけど、テキパキしていて何だか感じよさそうなの。わが家もぜひあの人に世話してほしいと思って、いきなりお願いしてみてね…。それからのおつきあいになるんですよ。」
妹「あんまりお姉ちゃんたちが「クーカン、クーカン」って言うから、
私の家も見てもらいたいなと思ったわけね。早く紹介してよーって(笑)」
姉「ウチのリフォームをする前に、まずピアノをどかして(移動して)欲しくてね。そうお願いしたら、平塚家具社長がすぐにやって来てヒョイヒョイと(笑)。大工さんたちも気のいい人ばかりで助かりました。いざ始めてみたらいろいろ問題があって、家の傾きを直してもらったり、錆びついた水道管を直してくれたりと有難かったです。当時98歳のおばあちゃんがいて、デイサービスに行っている間にしか工事が出来ないという制約もあったんだけど…。一番うれしかったのは、おばあちゃんの一言やね。
工事のことは無関心かと思っていたのに、床を直したら「いいもんやなあ」としみじみ言ってくれて…。」
ーーーキッチンの色やカーテン、壁紙は施主様が直感で決められたとか…。
姉「そうね。私はこれがいい!と思ったら、即決。娘より案外、決断力あるから(笑)。あんまり味気ないのも、何だかつまらないでしょ。キッチンの色も明るくて良かったし、光の加減で色の具合が違ってみえる壁紙も気に入ってるよ。遠方に住む息子も「良くなった、良くなった」と喜んでくれました。ちなみに娘は天井の珪藻土の塗り方にこだわってました。乱流っていうの?塗りあとが見える感じに仕上げてもらって。やっぱり味があって、いい感じになったんじゃない?」