MENU
築90年・大正時代に建てられた呉服商の家を、現代風アレンジで住みやすい庵にしました。
6畳+8畳+3畳の和室をすべてバリアフリーでつなげ、開放的なリビングダイニングに。
大正時代の松の梁はそのまま残し、磨いて仕上げました。
旧床の間を寝室に。南の掃き出し窓(写真左)はあえて腰窓とし、プライベート感を大事にしています。また、北の部屋(写真右方)は6畳の畳の間でしたが廊下とトイレ、お風呂に改装し、4枚建ての襖だった戸を板張りの引き分け戸にしたせいで、広さ感を保ちつつ部屋の壁の印象をスッキリさせました。
襖の奥は、現代的なクローゼットに。棚一枚の収納室は何かと使いにくいので、洋服ハンガーや奥行きの浅井棚板数枚で、モノをしまいやすいクローゼットに変えました。
トイレ。車いすや歩行補助器具の取り回しがいいように、広めに作っています。
廊下。ダイニングキッチンから、西のカーポートまで直通です。車を停車してからぬれずに家に入れる便利な動線です。
家の西のカーポートと勝手口。下駄箱や深い庇の下に作ることで、外に出やすい気分を演出します。
洗面室。水回りをホテルライクにつくることで古民家の古さを払しょくし、清潔感の中で暮らしていただけます。
洗面室とトイレのドアは、洋風デザインの木製框組みドア。実際に手にふれたときの高級感を大切にしています。
純天然木100%の階段。昔こういった階段は、大工でなく「指物師さしものし」と呼ばれる家具などの木工職人が作りました。家に使う太く武骨な材ではなく、極限まで薄い木で丈夫につくるために、職人の手を変えていたわけです。日本の文化の一つなので、施主さんの要望を突っぱね(笑)、既存のまま残し、古びた木を磨いて塗装をかけて仕上げました。 玄関引戸を開けた途端広がる、高い天井と広い土間は、古民家住宅が愛されるポイントの一つです。
玄関ホールと千本格子の中戸 調査で家に入った日、鑑定士たちが惚れてしまった千本格子戸のある玄関土間。 その趣をそのままにのこしました。折れていた格子一本を新しい木で継ぎ足しています。
玄関ホールを抜けた北側の渡り廊下 ダイニング側から、ゲストルーム側を見たところ。北側にドッグランを作れるように大きいガラス戸をはめたので、あえて「渡り廊下」にしてみました。
納戸 昔の梁や小屋裏がそのまま見える、味わい深い納戸です。昔は土間になっていて、じゃが今やお米の貯蔵、家財の収納に使われていました。新しくしてからは、左に服、右に布団が収納できるようになっています。
玄関から少しだけ高くなった小上がり(座敷)を、縁側をなくし廣井9畳のゲストルームにリノベーション。ほかの場所に使われていた建具をうまくはめ込み、程よい量の壁面も確保したため家具などの調度品が起きやすくなりました。
渡り廊下 鼠色だった壁をあえて黒く漆喰塗装し、ワイルドな木材に合うデザインに仕上げました。
渡り廊下の土間 現代的な感じを出すために、さび色のタイルで仕上げました。
壁に使った聚楽仕上げの壁紙 すべての塗り壁を左官(漆喰や、聚楽など)でしあげると、コストや時間がかかるため、一部を壁紙仕上げにしました。20冊のクロス帳の中でも、これしかなかったと言える、菊をあしらった繊細な立体の和柄です。
古建具へのこだわり 古民家をなおしていると、床が右と左で5cmも沈んでいるなどのことがあります。そんな時は水平・垂直に柱を直します。すると、建具の高さが足りなくなることがあります。 この写真では、古い建具に木を継ぎ足して、再利用しているのがお判りでしょうか。 一緒に古びた木の建具をリユースすることは、デザイン上いいのはもちろん、地球環境にもいいサスティナブルで文化的な取り組みです。
古材へのこだわり 昔の鴨居(戸の上、溝が彫ってある梁や桁)は「本鴨居」といって、30センチ近くある木を彫り込んで作ります。この古材は、樹種にもよりますが150年から300年かけて強くなり、500年かけて朽ちていくといわれています。この家のように築90年は、まだまだ強度が出る途中の材木です。この可能性を大事にし、木のほこりや汚れを落としてそのまま使っていただきます。にじみ出るこの艶めきを、愛でながら暮らしていただけたらと願います。
千本格子の戸 格子戸、と一口に言っても、その木の細さで「百本格子」「千本格子」「万本格子」など、呼び名や価値が違うのをご存じですか。この家の格子戸は、さしづめ「千本格子」と言えます。岐阜は京都と江戸を結ぶ地に位置するため、比較的繊細で豪奢な「千本」「万本」の格子戸を気軽に見ることができます。この細い木で戸を作るには、反らない木と、木の向きや部位を正しく伐り出して使う指物師(つまり、建具職人)の技が必要です。この細い木で造った建具は、日本の繊細な木工文化の象徴ともいえる 大切な文化遺産なのです。